よるくも 5巻（最終話）のネタバレあらすじや感想・結末など

よるくも 5巻のネタバレあらすじや感想・結末など

漆原ミチさんのダークSFファンタジー、「よるくも」のあらすじを結末までご紹介します☆
全5巻完結！結末までネタバレあり♩
不気味なのに不思議な世界観にやられます。

よるくも漫画の概要
よるくもネタバレと結末・感想
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よるくも漫画の概要

金持ちから最貧困まで3層にわかれた世界。
貧しい「畑」の世界の世界で小さな料理店を営むキヨコ。
ある日「畑」よりもさらに最下層「森」からやってきた小辰、という美青年を世話することになります。
しかしこの美青年、実は「よるくも」という殺し屋でした。
幼いころから「殺し」だけを教育されてきた青年の未来とは…

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よるくもネタバレと結末・感想

よるくも 5巻（最終話）

幼い頃、体の弱い王子は親から見捨てられ「廃棄処分」されそうに。
「わたしイリエワニもヤマカガシもラーテルもドクツルタケさいばいキットもいらないわ！もう、いらない。そのかわりーー兄にが、ほしい！こんなになってもいきようとしている！いとしい。」
この言葉で王子は廃棄されずに済み、世界のすべてが百になった。
そしてなんとか生き延び、元気になった王子。
王さまから中田を紹介され、仲良くなりたいと手を伸ばすんだけど、自分とはあまりにも違う彼のオーラに気圧され、その手を引っ込めてしまう。

「あなたといて気付いた。一日中あの人のことばかり。 ……あの人の、苦しむことを探して、嫌がることばかりしてーーあの人の大事なものを取り上げて、それを、飾る。ねぇ王子様、あなたをいつもつき動かすのは誰？あなたの時間を一番食ったのは誰？あなたの心をずっと占めている人は？」
力では王子に敵わないと言ったキヨコが選んだのは精神攻撃。
その効果は覿面で。
「中田さんは、あなたが殺した。」
その事実に耐えられなくて王子は自殺しようとするんだけど、それすらも「こわい……」と言ってすることができなくて。
キヨコが覚悟を決めて王子を殺そうとしたところに止めに入ったのは百。
再起不能になった兄を開放してもらう代わりによるくもの足かせの鍵をキヨコに渡す。
ふたりきりになった荒磯兄妹。
百が自分のスカートの中に兄を誘うから「え、そっちの展開!?；」とビビってたらそこに医療班(?)がやって来て。
「ねぇ、兄に。どうしてうまくいかないのか、知りたい？サイズがあわないのよ。兄にに対してこの世界は大きすぎる。だから、ね？小さくなろう。この部屋を兄にの世界にしてあげる。兄に、これで安心ね。足が無ければもうどこにも行かなくてすむわ。」
よるくもの足の骨でレースを作って身につければ、もう彼はどこにも行けない、ずっとそばにいてくれる、と言っていた王子。
そうなるように、王子本人で実現してしまった百。
……このシーンはほんと怖かった。
医療班がギロチンを持って来たから、首落として殺すのかと思ったもん。
だから、首じゃなくて足でよかったと思ったんだけど（←よくないけど）、冒頭からここまでの流れを見て、兄に虐げられていたように見えた百は、すべてを承知で、愛玩動物である兄の思い通りに動いてやることで逆に兄を動かしていたのかな、
兄の思うがままに振る舞って弱い自分を演出して、そうして兄が心の均衡を保つのに一役買っていたのかな、
狂っていると思っていた王子も、ただ百の手のひらで転がされていただけなのかな、と思いました。
あーもうほんと、荒磯兄妹こわい。
怖いけど、魅入ってしまう…。

王子のコレクションを作るための壺がたくさん置かれた場所に、餓死させるために繋がれていた小辰。
呼びかけても反応しなかったのに、キヨコの怪我に気付くと心配をしてくる。
そんな小辰のためにゆで卵を作ったキヨコ。
食べてと言っても反応してくれない小辰に問いかける。
「…もう、私の作ったもんは、なんにも食いたくない？」
「たべ、たら…なくなる… なくなったら、もどらない… スイカもたまごも、てんちょう、も…」
食べ物と人間を同列にしてしまうのが小辰らしいところなんだけど、この台詞を聞いてほんとに中田は小辰の全てだったんだなと思わされました。
どうしても小辰に食べて欲しいキヨコは、中田は生きている、病院でケガを治してる、と言ってゆで卵を渡そうとするんだけど、中田が倒れた場面を思い出しどうしても食べることができない小辰。
中田が生きていると言っても駄目、
中田を信じろと言っても駄目、
無理矢理食わせようとしても吐き出してしまう…。
小辰に食べてもらうために、
何もかも死んでもまた元にもどると言い聞かせるキヨコ。

「わかるよ。信じられないよね。それでこんなに苦しんでる。でしょ？だから、ね。いーよ！一回、壊そ。もどるから。小辰。大丈夫。安心させてあげる。きて。証明してあげる。」
そう言いながら小辰の手を自分の首に導く。
キヨコの細い首を覆う手に力を込める小辰。
キヨコの体から力が抜けた。
気絶した、と思ったら豪快にキヨコの腹が鳴りだして。
それを聞いた小辰は手を離し、キヨコのためにゆで卵をむいてやる。
キヨコは何も出来ない自分に嫌気がさして。
でもようやく意思を持って動き出した小辰から、一度は断ったゆで卵を受け取り、口に入れる。
もっとほしいと言うキヨコの口に、どんどん殻をむいて卵を入れてやる小辰。
“…キヨコが、たまごがきえて、キヨコがつづく…”
そして鳴る小辰のお腹。
もう一度小辰のために殻をむいてやるキヨコ。
今度は差し出された卵を食べることが出来た小辰。
そこから続く、人々の生活、食事の風景。
あー、凄いなー…と思いました。
生きるってこういうことなんだなと。
生きて、ご飯を食べるということの幸せ。
そこに溢れる人々の笑顔。
どんな環境にいようと、食べるものと、そばにいてくれる人がいれば、そこに幸せはあるのだと。

その後の荒磯。
実権を握ったのは百。
今後一切、殺しから手を引く。
今の時代は自然保護だ、と宣言した彼女。
その手には虫や動物が。
そばには狂ってしまった兄がいて。
荒磯の将来がどうなってしまうのかは不安だけど、
そして愛しい者を殺してしまったという事実に耐えられず狂ってしまった王子も可哀想だと思ったけど、
もしかしたらこれが、この兄妹の幸せの形なのかもしれないなと思いました…。

殺しから手を引いた荒磯に代わり、子供たちの面倒を見ることにしたキヨコ。
そして小辰とも一緒に暮らしている。
メシが冷めると言われても、小辰が美味しそうに食べているところをただ見ているキヨコ。
……あれ？なんかおかしい…の、か？；
腹の虫が盛大に鳴っても食べようとしないキヨコの口にメシを入れる小辰。
子供たちを育てる、という希望を見出したはずのキヨコが、何故か自分が小辰に教えた、食べることの大切さを忘れている…。
子供たちの面倒はちゃんとみているようだけれど、キヨコ自身のことはちょっと不安になってしまいました；

それぞれにとって、
明るくも、暗くもあるラストだったと思います。
キヨコはまっとうな生活から堕ちて、ちゃんと周りを見ることは出来るものの、何かの感情が抜け落ちて……特に自分に関することに無頓着になってしまって。
小辰は今まで感情を持たずに、ただ中田に言われ殺しをしていたのが、キヨコの平穏のために自ら殺しをするようになって。
百は王子の操り人形をやめ、いとしい生き物たちの世話をして。
王子はすべてのしがらみから開放されて、何もなくなって。何も考えられなくなって。
……取りようによってはみんな幸せだし、みんな不幸にも思えます。（…不幸色強めですが；）
でもそれぞれが、生きて、メシを食うことが出来る間は、幸か不幸かは別として、平穏な生活が送れるのかなと思いました。